光によるデジタル画像記録方式としては,レーザー走査,CRT,白色光源シャッターアレイ,LEDアレイ,LEDドラム走査などが各分野で商品化されている.特に,高品質・高機能を要求されるデジタル画像記録分野では,原理的に,レーザー走査方式が最適の技術である.画像記録の中で最も高品質なアナログのカラー銀塩写真画像に相当するデジタルカラー銀塩写真を商品化するには,写真用カラープリンタに適した高品位・小型の青色および緑色のレーザー光源が必要であった.しかし,広く実用化されている青色および緑色のレーザー光源は,Ar,He-Cdなどのガスレーザーであり,高品位・小型・長寿命などが必要とされるテジタルカラー写真プリンタの要求を満足していなかった.

ここでは,写真用カラープリンタに適した高品位・小型の青色および緑色の半導体レーザー励起内部共振形波長変換固体レーザー(以下,波長変換固体レーザー)とそれらのレーザーを搭載したカラー写真画像を銀塩カラーペーパーに露光する業務用デジタル写真プリンタの代表的な存在であるFRONTIER4)を取り上げる.

33・3・1 写真用レーザープリンタとインクジェットプリンタ

近年,デジタル画像処理技術の進展に伴い,カラー画像のデジタル処理は急速に普及しており,カラー写真を高速で処理するラボ用業務機器においても,デジタル処理の実現が待たれていた.高精細,大容量のカラー写真画像データを高速処理し,いままでにない高画質のプリントを実現した世界初の業務用デジタルカラープリンタFRONTIERが平成8年に商品化された.このプリンタは,デジタル化されたカラー写真画像データを銀塩カラーペーパーにレーザーで露光するもので,写真の高画質化・高機能化を実現することによって,写真の新しいサービスの提供をもたらした.カラーペーパーにレーザー露光するレーザー走査露光部を図33・9に示す.

図33・9

これを実現するためには,高品位・小型・長寿命の青色,緑色,赤色の光の三原色レーザーが必要である.赤色レーザー(660 nm)は市販の半導体レーザーを改良して使用され,青色(473 nm)および緑色(532 nm)レーザーとしては,高品位・小型・長寿命の波長変換固体レーザー(33・3・3参照)が使用されている.デジタル化されたカラー写真画像データは青色,緑色,赤色レーザーにおのおの供給され,変調されたのち,ポリゴンミラーでカラーペーパー上に走査露光され,現像される.この青色,緑色,赤色の3色レーザ走査露光走査記録では,127×89 mmのLサイズ1枚を1.3秒(A4サイズ1枚を4秒)でプリントする高速性能,さらにはフレアがきわめて少ない抜けの良い画像,むらのないグラデーション再現性,大伸ばしでも優れたシャープネス,などの高画質性能を有している.基本性能を表33・2に示す.

表33・2

現在,写真プリント用のレーザープリンタとして実用化されているのは,ここで紹介した業務機器に限られている.一方,近年,デジタルカメラの普及に伴ない,ホーム用の写真プリンタとしてインクジェットプリンクが用いられている.しかし,インクジェットプリンタは,写真用業務プリンタとしては,高速プリント性能などに課題があり,本格的に普及するまでに至っていない.

ここでは,写真用プリンタとしての業務用レーザープリンタとホーム用インクジェットプリンタの性能を比較する.プリントスピードは,127×89 mmのLサイズで,前者は650~2300枚/h,後者は50~90枚/hである.画質の比較は,発色方式が異なるので解像度というような一義的な項目での比較はむずかしい.前者はドットを1個ずつフルカラーで多階調(たとえば,8 bit)で表現するのに対し,後者は4色や7色のドットを組み合わせ,ドットの面積で階調を表現している.したがって,前者は原理的に拡大しても粒状感(ザラツキ)は少ない.また,プリントの耐久性に関しては,前者は後者に比較して,耐光性,耐ガス性,耐水性に優れており,色の変化がなく,長期保存に適している.

33・3・2 MgO-LiNbO3ドメイン反転バルク結晶5)

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