ホログラフィーはレーザー光の高い可干渉性を最も巧みに生かした光学技術の一つである.干渉と回折を利用した波面の記録と再生によって,拡散反射物体を含む3次元物体の結像や計測や情報処理そして平面型の光学素子などに広く応用することができる.またスペックルはレーザー拡散光の干渉によって生ずる高コントラストの不規則パターンであり,レーザー画像の著しいノイズになる.しかし,その統計的な性質は,一般に粗面の微視的な構造にはよらず,レーザーの波長と光学系だけで決まる.それゆえ周波数分布を制御できるランダムパターンとして利用できる.さらに粗面の変位や変形によって明暗変化や移動が生ずるのでレーザーの可干渉性が粗面につけた自然の目印として変位や変形の計測に用いることも可能である.

本誌では,ホログラフィーの基本原理と応用およびスペックルの性質と応用について物理的な観点から説明する.

[1] ホログラフィー

レーザー光を用いるコヒーレントな結像においては,自由空間およびレンズ光学系などを光波が伝搬する際に,時間的に波面は定常に保たれ,その形状が逐次変化していく.ホログラフィーではこの結像過程が,干渉を利用したホログラムへの波面の写真記録と,それからの回折による波面の再生の2段階に分割されている.最初の提案は1948年のD.Gaborにさかのぼるが1),1962年のE.N.Leith and J.Upatnieksによるレーザー光と情報通信型論の導入が画期的な進歩をもたらした2).これによって真の3次元像の記録と再生が実現し,また波面の変換作用を利用した軽量で量産性に優れた平面状の光学素子やパターン発生器が開発された.回折光学素子としては,それ以前にも回折格子やフレネル帯板が知られていたが,微細なホログラムパターンの記録とレリーフ形成技術の進歩により,その用途が一気に拡大された.この際に干渉縞を実際に露光する代わりに,それを計算・プロットして縮小搬影したものを用いることもできる.これがコンピュータホログラムである.

ホログラフィーの真骨頂はおそらく拡散反射光の記録と再生の機能であろう.われわれの周囲のほとんどの物体は粗面であり,それらは拡散反射を示す.それを観察することでリアルな立体感が得られている.拡散反射された波面には表面の不規則な粗き構造に応じて細かいしわがよっているが, それは時間的に定常であり,ホログラムにはスペックル状の干渉パターンが記録される.これに参照光をあてると,物体光が再生されて伝搬を続けるので記録時と同じ立体画像が観察できる.また眼には見えない位相の分布の変化を,たとえば物体が変形する前後で二重露光されたホログラムからの再生波の間の干渉縞として観察することも可能である.このホログラフィー干渉法によりそれ以前はなかった粗面の干渉計測が実現し,粗面の形状,変形,振動などを対象にまったく触れずに,光波長で決まる高感度で測定できるようになった.しかしホログラムが写真材料に記録されているので,測定の高速化と定量化のためには現像処理がネックであった.これを解決したのが,ホログラムを撮像素子で記録し,再生をコンピュータでおこなうデジタルホログラフィーである.

この技術は1990年代のデジタル画像技術の急速な進歩を受けて一躍発展し,現在多くの注目を集めている.上述のコンビュータホログラフィーは,これとちょうど逆の手順に従っているが,デジタルホログラフィーの範疇に加えられる場合もある.

[2] レーザースペックル

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