1973年フィリップス社は絵のでるレコードとしてVLP(video long player)を発表した47).直径30 cmの透明なディスク基板にアナログ動画信号を凹凸ピットで刻み込み,He-Neガスレーザーを使って再生する光ディスクである.現在の光ディスクは,このVLPの原理に立脚している.1981年にVLPを発展させたLD(laser disc)が,1983年に音楽をデジタルで記録したCD(compact disc)48)が,1996年には2時間の映画をMPEG2(motion Picture Expert Group)で再生するDVD(digital versatile disc)49)が商品化された.この間,光ディスクは再生専用タイプからCD-R50)(CD-recordable disc)のように1回だけ記録できる追記タイプ,DVD-RAM(DVD rewritable disc)51)52)のように自由に情報を書き換えられる書き換えタイプが実用化された.

光ディスクは,i)非接触記録再生である,ii)光の回折限界の非常に高い記録密度が得られる,iii)ごみに対して強い,iv)装置からディスクを取り外して持ち運びできる,v)再生専用形・追記形の磁気メディアにないメディアがある,vi)複製によって安価に大量生産ができる,という特徴がある.光ディスクはコンピュータ時代の「デジタルの紙」として期待されている.

30・3・1 光ディスク記録の特徴

光ディスクはディスクモータのターンテーブルに機械的に装着して高速に回転させ,レーザー光を対物レンズで1 μm程度に絞った光スポットを使って信号を記録再生する.この構造によって光スポットには次の収差が発生する.

式770i

ここで,λは光の波長,NAは対物レンズの開口数,tはディスク基材厚である.光スポットの大きさはλ/NAに比例するから高密度記録には,i)波長λを短くするか,ii)レンズのNAを大きくすることが必要である.

図30・14は代表的な光ディスクと対物レンズの構成である.代表的な光ディスクであるCD,DVD,BD(Blu-ray Disc)53)では,短波長化と高NA化につれてディスクチルトの影響を軽減するためにディスク基材の厚みが1.2 mm,0.6 mm8),0.1 mm29)と薄型化されてきた.BDでは保護層が薄いことからカートリッジが必要でレンズとディスクの距離WDも狭いなど光ディスクの特徴を犠牲にしてまで高密度化が試みられている.

図30・14

30・3・2 光ディスクの種類と記録材料

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