光ヘッドは光ディスク記録再生装置(光ディスクプレーヤ,光ディスクレコーダ,光ティスクドライブ)に搭載され,レーザー光を介して,光ディスクとの間で情報をやりとりするキーパーツである.

30・2・1 光ヘッドの基本機能と構成要素

図30・2に示すように,光ヘッドは基本的に,レーザー光源,光検知器,ビームスプリッタ,対物レンズアクチュエータ,および,これらの部品を保持するベースから構成されている.

図30・2

光ヘッドの基本機能は,レーザー光源から放射されるコヒーレント光を光ヘッド内の光学系,対物レンズを介して光ディスク上に微小な(直径約1 μmから0.数 μm)光スポットとして集光照射し情報の記録再生をおこなうことにある.レーザー光源としては,小型の半導体レーザーが主に使用され,CD12)13)14)19)では波長780 nm,DVD14)では波長635から650 nm,そして,Blu-ray Disc15)では波長405 nmの半導体レーザーが光ヘッドに搭載されている.再生専用タイプでは出力が5 mW級のものが,また記録再生用には,その最高記録速度によるが,最大ピーク出力が30 mWから200 mW級のものが搭載される.また,光ヘッドの光出力は再生時には一定に,記録時にはパルス状に制御されなければならない.この制御には,光ヘッド光学系内もしくは半導体レーサーパッケージ内に設けられた光検知様で受光されるレーザー出射光の一部が使用される.

まず対物レンズに関してであるが,光ヘッドの場合,その開口数(NA)が0.45(CD),0.6(DVD)から0.85(Blu-ray Disc)と大きく,かつ収差の非常に小さなレンズが搭載される.ただ,入射するレーザー光束の入射角度の光軸からのばらつきは1°よりかなり小さいため,収差の軸外特性(対物レンズの光軸に対して光が斜めに入射した場合の収差特性)はほとんど考慮する必要はなく,軸上特性(対物レンズの光軸に対して光が平行に入射した場合の収差特性)がほぼ無収差となる設計がされる.レーザー光源から放射されコリメータレンズやビームスプリッタを介して対物レンズに入射するレーザー光の収差も非常に小さなため,光ディスク上には回折限界で決まる直径(波長/関口数程度)の光スポットが形成され,情報の記録再生に使用される.

次に,光ディスク上の記録情報の検出についてであるが,CDに位相ピット(深さがレーザー光波長の数分の1の凹か凸)の形で記録された信号は,そこに照射されるレーザー光を回折する.したがって,反射され再び対物レンズに捕捉されるレーザー光の光量は位相ピットのあるなしで変調され,これが,通常シリコンのpin構造で作られた光検知器で電気信号に変換され,復調回路にてデジタル信号に戻される.再生信号の時間波形に関しては,フーリエ光学の理論を用いて記述でき,計算方法に関していくつか報告されている16)17)18).MD14)や光磁気ディスク14)19)などでは光ティスクに垂直磁化された磁気ドメインの形で記録されている信号によって,集光照射されたレーザー光の偏光方向が変調される(これについては後ほど述する).

光ディスクは,その回転に伴って回転軸方向・半径方向に振動する(たとえば,CD規格ではディスク面振れが±500 μm以下,ディスク偏心が±70 μm以下と規定されている)ので,光ディスク装置は光ディスクの面振れ,偏心にかかわらず微小な集光スポットを光ディスクのトラック上に維持する必要がある.その精度は焦点方向に±1 μm程度,トラックと垂直方向に±0.1 μm程度である(もちろん,対物レンズ関口数,波長,トラック間隔によって決まり,高密度になるほど精密な制御精度が必要となる).光ヘッドの機能は,この集光スポットの焦点制御・トラッキング制御に必要なサーボ信号を生成するととも,光ディスク装置内に設けられた制御回路の出力信号に基づいて対物レンズアクチュエータ(対物レンズ駆動機構)をドライブして集光スポットを正確に目的のトラック上に維持することにもある.焦点制御・トラッキング制御のためのサーボ信号は光ヘッド内に設けられた光学素子と多分割光検知器によって発生される.

図30・3は光ヘッドに搭載される代表的な焦点誤差検出方式を示したものである.図(a)に示す非点収差法20)はCDやDVD用の再生用光ヘッドに多く採用されているもので,円筒レンズと4分割光検知器を使い,光ディスクの記録商上に焦点が合ったときに光ディスクから反射されるレーザー光が4分割された素子にほぼ均等に当たるように光検知器の位置が調整される.図のように,焦点ずれが発生すると斜め方向に細長い光束となり,焦点前後でその方向がほぼ90°異なるため,合焦(焦点の合った状態)を中心に両極性の焦点誤差信号が得られる.図(b)に示す瞳遮へい法21)(フーコー法ともいう)はデータ記録用光ヘッドによく採用される.光スポットがトラックを横断したときに焦点誤差信号の乱れが小さく,高速検索に適当であるという特長を有する.本方式では,光ディスクの記録面上に焦点が合ったときに光ディスクから反射され半円状となったレーザー光が分割線上に集光して当たるように光検知器の位置が調整される.したがって,合焦の前後では,左右のエレメントに半円状の光束として入射する.実際の光ヘッドへの実装では,屋根型プリズムなどで二つの半光東を生成し,それぞれを二つの2分割光検知器に入射させることが多い22).こうすることで,光検知器の分割線に垂直な方向(x方向)への光束の偏移に対する焦点誤差信号のオフセットが大きく低減できる.図(c)はスポットサイズ検出法23)で,焦点前後のスポットサイズの変化を検出する方式である.調整では,光ディスクの記録面上に焦点が合ったときに光ディスクから反射されるレーザ光の外側の二つのエレメントで受光される強度と中心のエレメントで受光される強度が均等になるように光検知器の位置が調整される.実際の光ヘッドでは,二つの3分割光検知器を,等価的に,焦点の前後がほぼ等距離になるように配置する.本方式は,回折格子を使った複合機能ビームスプリッタで合理的に実現できるので,小型光ヘッド用のユニットに多く採用されている24)

図30・3

また,図30・4は,代表的なトラッキング誤差検出方式を示したものである.図(a)はCD再生用光ヘッドにほぼ標準的に採用されている3ビーム法25)である.二つの副スポットは半導体レーザーと対物レンズの間に配置された(図では示されていない)位相型回折格子によって生成され,情報トラックをはさみ込むように配置される.二つの副スポットの反射光が光検知器で受光され,その差がトラッキング誤差信号となる.図(b)は多くの記録用光ヘッドに採用されているプッシュプル法20)であり,トラッキングずれにより情報トラックからの回折光強度分布が非対称になることを2分割光検知器で検出する.また,プッシュプル法の欠点である対物レンズ並進などによるオフセットを低減した差動プッシュプル法26)は,多くのCD-R/RW,DVD-R/RW用光ヘッドに採用されている.図(c)はDVD再生用光ヘッドで標準的に採用されているDPD(差動位相差検出)法27)である.これは,光ディスク上の位相ピットの前後縁で回折される反射光の対称性を電気的に位相検出する方法である.対角線方向の素子の二つの和出力の位相とトラックずれが比例することを利用している.この方式はDVDの狭トラック間隔に対応でき,かつ,田の字の4分割光検知器を使う非点収差法を実現する光学系に光学素子の追加なく実現できるという特長を有する.

図30・4

焦点誤差信号(既述)やトラッキング誤差信号に基づき,光ディスクの面振れ,偏心に集光スポットを追従させるのが対物レンズアクチュエータである.基本的にはモータと同じように電磁力を使用し,対物レンズを搭載したホルダを判的向(上下方向),ディスクの半径方向に移動させる.ホルダを支持する構造としては,図30・5に示すように,軸方向に立てたシャフトに沿って対物レンズホルダを摺動(スライド)させるとともに,これを回転させる構造(軸摺動回動型)28)と,ホルダを4本のワイヤで保持し,軸方向と半径方向の自由度を確保した構造(ワイヤ型)24)が一般的である.軸摺動回動型の特長は,軸によって対物レンズホルダの自由度が規定されるため,対物レンズの傾きが発生しにくく,半径方向には,バランサによって動的バランスがとれている点である.ただ,対物レンズホルダ(可動部)の重量,モーメントの大きさによっては,軸とスリーブの間のクリアランス,摩擦などの厳しい管理が必要となる場合がある.一方,ワイヤ型は,電磁コイルへの入力に対し線形な変位特性を有するが,ワイヤのねじれが対物レンズホルグの傾きを引き起こしやすいという欠点があり,また,軸摺動型にくらべて組立精度を必要とする.

図30・5

30・2・2 単層・多層ディスク用光ヘッド

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