干渉計測はレーザー光の高い干渉性を利用した,レーザー計測の代表的な手法である.ここでは,レーザー干渉計によって,時空間のひずみである重力波,つまり重力相互作用が波動として伝搬する現象を検出する試みについて述べる.

重力波は純粋に相対論的な効果であり,いまだに直接検出されたことはない.重力波を議論するためには,ニュートンの万有引力の法則では不十分で,相対論的な重力理論が必要となり,アインシュタインの一般相対性理論はその代表的なものである.理論的な予測では,重力波の影響はあまりに小さいので,それを検出するのは不可能と考えられていた.しかし,レーザーと光学技術の進歩により,地上で検出できる可能性が高まっている112)113)

26・8・1 重力波の発生

電磁気学では,クーロンの法則に関して,電気力線は電荷のないところでは切れないということに相互作用は有限の速さで伝わるという要請を加えることで,加速度運動する荷電粒子は電磁波を放出することが示される.同様な考え方で,加速度運動する質量は重力波を放出することが理解できる.実際,この二つの波動現象の性質はよく似ている.ともに,横波で二つの偏波の自由度があり,光速度で伝搬する.また,電磁波は双極子放射が基本で発生するのに対して,重力波は四重極放射が支配的となる(重心系で考えると質量分布には双極子モーメントは存在しない).ただ,決定的な違いは相互作用の強さにある.たとえば,古典的な水素原子では,電子と陽子に働くクーロン力に対する重力の比は約10-40であり,重力は極端に弱い.しかし,重力の源である質量はつねに正なので,大きな範囲を考えるとその影響は顕著となり,天文学の世界は重力に支配されている.もし,星どうしが衝突するとか,星全体が吹き飛ぶような激しい現象が起きれば,巨大な質量が大きな加速度で運動するだろう.その場合には,大きな重力波が放出されることが期待される.

重力波の大きさは,空間の相対的なひずみで表され,振幅hの重力波は,Lだけ離れた2点の間の距離を

式22ページ

だけ変化させる.理論的な計算では,地上で観測が期待できる重力波の振幅は10-21またはそれ以下と考えられている.もし,Lを太陽と地球の距離(1.5×1011 m)とすると,δLは水素原子の大きさにほぼ等しい.期待されている信号の周波数は,数十Hzから数百Hzの範囲にあり,信号の波形から源の運動状態に関する情報が得られる.重力波を計測するということは,このように極めて小さな変化を測定することである.そして,それは同時に重力波で天体を観測することになる.

26・8・2 検出法

無料ユーザー登録

続きを読むにはユーザー登録が必要です。
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
ログインパスワードをメールにてお送りします。 間違ったメールアドレスで登録された場合は、改めてご登録していただくかお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目