26・6・1 背景

造物や遺跡などの文化財は,過去についての重要な情報を提供し,人類の歴史を語る共通の財産である.現在,広く歴史教育や一般公開を目的として,これら文化財を情報処理技術を活用し,積極的にデジタルアーカイブを推進しようとする機運が高まっている.デジタルアーカイブでは,土器などの造物や遺跡の画像記録やCGなどをWEBやバーチャルシアターなどで提供することで,一般の文化財はもちろん,保存状態が悪く一般展示ができないもの,立入りが制限されている遺跡の内部,海外の文化遺産などの閲覧を可能としている.ここで提供されるCGは仮想的なものであるが,そのもととなる3Dモデルは遠隔の文化財を単に紹介するだけではなし破壊発掘により消滅した(あるいはする可能性のある)文化財の保存・記録のための意味合いを持つものでもあり,実物の文化財の実測に基づく正確なデータである必要がある.このように,3次元データが重要となる文化財デジタルアーカイブにおいて,レーザースキャナを用いた計測は,非接触型計測であること,効率が良いこと,オペレータの熟練度によらない計測が可能であるなど,応用するうえでの利点が多い方法であり,その重要性は増しつつある.

26・6・2 原理

一般にレーザースキャナを用いた計測で得られる情報には計測対象の形状,対象からの反射強度がある.

レーザースキャナによる形状取得の基本となるのは計測対象までの距離計測であり,そのための方法として三角法,位相差法,タイムオブフライト法がとられている.ここでは,そのうちのタイムオブフライト法について説明する.

図26・26

タイムオブフライト法では,レーザーの出射から,対象物からの反射波が受光されるまでの時間に光速度を乗ずることでレーザースキャナと対象との距離を計算している.また,レーザー照射方向については,ある軸を起点とした水平,垂直それぞれの移動角度を計測することで求められる.このようにして得られた移動角度と,対象までの距離をもとに対象のXYZ座標を計算することができる.

反射強度は対象より反射したレーザーの強度を記録するものである.レーザーは計測対象の材質によって反射強度が異なる性質を持っているため,反射強度は,計測対象の材質や属性についての情報を得るためのデータとして使われる.

レーザースキャナのレーザー照射部が,水平・垂直方向に順次回転しながら対象をスキャンすることで,結果的に対象の形状を示す高密度な3次元座標(点群)と,それぞれの反射強度が取得される.このレーザースキャナにより取得される点群の密度や精度を左右する要因として,対象物との距離,レーザーの照射間隔,レーザーの広がり角度,レーザースキャナの角読取り精度がある.理論的には距離が近いほど計測密度が向上し,またレーザーの広がり角度も小さくなるが,計測有効距離が決まっているため,適切な距離をもって計測をおこなう必要がある.

次の処理は,取得された点群間を補完,あるいはつなぐことで面を形成することである.対象の大きさ・形状にもよるが,一点からの計測では死角が多いため,多くの場合,何点かで計測をおこない,複数のデータを接合することで対象の完全な3Dモデルを構築する.最近では,点群からの面形成データの接合はかなりの部分が自動化されており,きわめて効率的な3Dモデル作成が可能となっている.近年,レーザー計測技術の発達は,レーザースキャナによる応用範囲を広げ,都市計測や工業計測・地形計測など,さまざまな場面において利用が盛んとなっており,先述したように文化財においても彫刻や建造物など,さまざまなものへの応用が始められている.

26・6・3 文化財におけるレーザー計測の利用例

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