近年,媒質中に誘起される光カー効果によって,高速に変化する複屈折を利用したフェムト秒複屈折計測法が開発された88)~105).この方法は,フェムト秒時間分解偏光画像化計測法(FTOP:femtosecond time-resolvedoptical polarigraphy)と呼ばれ,媒質中を伝搬する超短光パルスをフェムト秒域の時間分解スナップショットとして直接的に画像化計測する新規かつ簡便な高精度計測法である.

図26・21に測定原理を示す.ポンプ光は直線偏光で,その電場の振動方向にx軸,伝搬の向きにz軸を設定する.また,プローブ光は直線偏光でy軸に沿って伝搬させる.ポンプ光の光電場が十分大きいと光カー効果により,プローブ光は実効的にx軸方向とz方向で異なる屈折率すなわち複屈折を感じることになる.この屈折率差に対して最も感度良く計測するように,プローブ光の電場の振動方向をxz面内でx軸に対して45°となる向きにとる.誘起された複屈折のため相互作用域を通過したプローブ光の偏光状態は楕円へと変化し,この変化分を入射プローブ光の偏光に対して直交した向きの検光子によって抽出する.
図26・21

このような配置のもとで検光子を通過したプローブ光の強度は,光カー効果が超高速の応答を示すため,交差した瞬間のポンプ光の強度を反映したものとなる.特に電子運動に起因した光カー効果は数フェムト秒程度の応答速度を持つことが知られており106),これを利用することにより本計測法はフェムト秒の時間分解能を得ることが可能となる.さらに,相互作用領域を2次元計測することで,ポンプ光の瞬間の強度分布を画像として取得できる.

図26・22に実験系を示す.用いたTi:サファイアレーザー増幅システムは,電場が水平方向の直線偏光,波長800 nm,パルス幅100 fs,パルスエネルギー50 mJ,ピークパワー0.5 TWの光パルスを10 Hzで発生する.レーザービームのごく一部分を分岐してプローブ光を作り,残りの大部分はポンプ光として用いる.空気のブレークダウンは10 GW程度88)90)92),またCS2媒質中のフィラメント化は10 MW以下の領域95)100)101)から観測される.ポンプ光は可変光学遅延を与えたあと,1/2波長板で電場が鉛直方向となる直線偏光に変換され,平凸レンズで集光される.集光レンズの直径は30 mmであり,ポンプビームの直径12.8 mm(1/e)より十分大きい.他方,プローブ光は1/2波長板と偏光子を用いてポンプ光に対して45°傾いた直線偏光にして焦点近傍の相互作用域を通過させ,検光子によって入射光と垂直な偏光成分を検出する.干渉フィルタを通過した波長800 nmの信号光は,拡大結像光学系を介して,CCDカメラで撮像され,取得画像(FTOP像と呼ぶ)はデジタル画像として記録される.
図26・22

プラズマ発光のうちのポンプ光と同一スペクトル成分を除去するため,同一条件下で,i)ポンプ光とプローブ光を入射した観測,ii)ポンプ光のみを入射した観測,iii)プローブ光のみを入射した観測,iv)両方を入射しない観測の計4回の観測をおこない,これらに対してi)-[ii)+iii)-iv)]の演算をして計測画像とする.プラズマ発光を伴わない場合には,プローブ背景光の除去,すなわちi)-iii)の演算結果を計測画像とすればよい.得られたFTOP像は瞬間画像であり,ポンプ光の光路長を変化させることで,測定領域におけるポンプ光とプローブ光の到達時間を変化させて,時々刻々変化する光パルス伝搬のようすをパルス幅程度の超高速時間分解能で画像計測することができる.また,通常は,S/Nを向上させるため10パルス程度を積算して画像を取得する.

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