フェムト秒レーザーが出現し,さまざまな研究に応用されるようになった.その一つとして,半導体の光スイッチにフェムト秒の光パルスをあててテラヘルツ光を発生させる研究が,1984年頃から35)主として米国で始められたが,半導体製造技術の進歩と相まって研究が広がりテラヘルツ帯(100 GHz~10 THz)の電磁波技術の新しい分野が開かれた.1990年代に入ってからテラヘルツ光源および検出器の研究が世界的に精力的になされている36).それと並行して分光計測や画像計測などへの応用研究も進んでいる.本節では,テラヘルツパルス光を用いた分光計測や画像計測の概要を述べる.

26・3・1 テラヘルツ分光計測法

テラヘルツ光の分光計測技術として最近確率されたテラヘルツ時間領域分光法(terahertz time-domainspectroscopy:THz-TDS)について述べる37)~39).テラヘルツ時間領域分光法は,テラヘルツパルス光を測定試料に入射させて透過または反射させたあと,そのパルス光の振幅の時間変化を測定し,フーリエ変換によって各波長の光に対する振幅強度と位相情報を得るという分光計測法である.

テラヘルツ時間領域分光計測をおこなうための光学系配置を図26・10に示す.フェムト秒レーザーから放射された光パルスは,ビームスプリッタを経てポンプ光とプローブ光に分けられる.ポンプ光はテラヘルツパルス光を発生させるためにテラヘルツ光源40)へと導かれる.一方,プローブ光はテラヘルツパルス光を検出するためにテラヘルツ検出器へと導かれる.プローブ光を導く光路上には可動鏡を移動させるためのステージが置かれている.レーザーから放射される光パルスの繰返しは数十MHzである.したがって,テラヘルツ光源から放射されるテラヘルツパルス光も同じ繰返しで放射される.現在の光検出器では,テラヘルツパルス光の波形を瞬時に計測することは不可能である.したがって本計測法では,同じ波形のテラヘルツパルス光が数十MHzの繰返しで到来することを利用して,ポンプ光とプローブ光の間に時間遅延を設けてテラヘルツパルス光の波形を計測するポンプ・プローブ法をとる.すなわち,プローブ光を導く光路上の可動鏡を移動させることにより光路長を変化させてプローブ光がテラヘルツ検出器に到達するタイミングをずらせながらテラヘルツパルス光の電場強度の時間変化を測定する.時間遅延によってテラヘルツ検出器を動作させるタイミングをずらせながら,繰返し到来するテラヘルツパルス光の波形をサンプリング計測する仕組みとなっている.このようにしてテラヘルツパルス光の電場の時系列波形を測定することができる.テラヘルツ検出器は,プローブ光があたったときのみキャリヤ(電子や正孔)を生ずるので,同時にテラヘルツパルス光が検出部に到来していれば,その電場に比例した光伝導電流が流れる.この光伝導電流は到来するテラヘルツパルス光の振幅E(t)に比例したものになる.テラヘルツ検出器からの出力電流は,非常に微弱なので電流アンプで増幅したのち,ロックインアンプを用いて増幅しコンピュータに取り込まれる.コンピュータに取り込まれたテラへルツパルス光の時系列波形をフーリエ変換することによって各波長の光に対する振幅強度と位相情報を得る.
図26・10

最近,コンパクトなフェムト秒レーザーの出現によってフェムト秒レーザー,テラヘルツ光源,テラヘルツ検出器,試料室,制御装置をコンパクトにまとめたテラヘルツ時間領域分光装置が市販されるようになった.

26・3・2 テラヘルツ分光計測の応用

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