非線形光学材料は,非線形光学効果に基づいた機能を提供する材料の総称である.およそすべての非線形光学現象はレーザー技術と密接な関連があり,広義の非線形光学材料を限られた紙面ですべて取り上げるのは不可能である.多くの材料の非線形光学特性について広範にまとめた成書5),6)については章末の参考文献を参照されたい.ここでは,最も直接的にレーザー技術と関わりがあり,応用上も重要な2次非線形光学効果による波長変換用結晶についてまとめる(実際,単に非線形光学材料というと波長変換用の結晶材料を指すことも多い).

7・2・1 2次非線形光学定数の絶対値スケール

非線形光学効果の最初の実現以来,2次非線形光学定数の測定は40年にもわたって続けられてきたが,その絶対値スケールには少なからぬ混乱があった.多くの研究者が根拠としてきた2つの代表的な文献に記載されているデータの間の食い違いが信じがたいほど大きいことからも,その深刻さは明らかである.Singhらによる文献7)中ではα-SiO2のd11を0.32 pm/V とするスケールが用いられているのに対して,Kurtzらによるデータ8)では0.5 pm/Vが採用されていた.

非線形光学定数の値は通常,相対測定によって決定される.そこでは,参照物質として用いられる物質の非線形光学定数の値が正しいことが絶対の前提条件である.結晶材料などの2次非線形光学定数や分子レベルの超分極率だけでなく,3次非線形感受率χ(3)の値までもが,もとをたどればα-SiO2のd11の値を基準としてスケーリングされている.つまり,すべての非線形光学材料の特性は正しい2次非線形光学定数の絶対値スケールに依存しているのである.

絶対値スケールに関する混乱は現在ではほぼ解消したといってよい9).結論だけ述べると,Kurtzらが採用したd11(α-SiO2)=0.5 pm/V という値はChoy,Byerによるパラメトリック蛍光(PF)測定の結果を根拠としているのだが,これが誤っていたのである(PF法自体は本質的に正しい測定法であるが,迷光などの影響を受けやすく相当の注意を払わなければ正しい値が得られない).現在では,第2高調波発生(SHG) 法によって決定されたd11(α-SiO2)=0.30 pm/Vを基準とした絶対値スケールが広く受け入れられている.

基準となる参照物質の非線形光学定数を表7.2にまとめる(参考のためにχ(3)の基準値10)も示した).最近の文献の多くはこのスケールを採用しているが,一部には絶対値スケールに関する配慮の欠けたものも残っているので注意が必要である.また,当然ながら,古い文献にあたる際には参照物質の基準値としてどのような値を仮定しているかについて注意を払う必要がある.

表7・2

7・2・2 代表的な非線形光学結晶

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