近接場光学(near-field optics)は,回折限界による光学顕微鏡の分解能を克服する手法として,現在,盛んに研究が進められている.波長を超える分解能を実現できることから,光学顕微鏡だけでなく,光記録,光加工など様々な応用が期待されている.

6・5・1 固体浸レンズによる高分解能化

屈折率nの媒質を光が伝搬するとき,光の波長はλ/nとなり,屈折率分だけ短くなるので,この光を利用すれば高分解能を実現できる.固体内部を伝搬する光では利用がむずかしいが,固体の表面では,波長λ/nの光がエバネッセント波として存在しており,これを利用することにより高分解能化が実現できる.

6・2・2「全反射」で示したように,高屈折率の媒質から低屈折率の媒質の境界面で光が全反射する場合,低屈折率媒質側にエバネッセント波が生じる.エバネッセント波の境界面に平行な波数ベクトルの成分は,k0n1sinθ>n2k0となり,媒質2を伝搬する光の波数よりも大きな波数を持ち,波長を超える分解能を実現することができる.

エバネッセント波を積極的に利用する方法として,半球プリズムを利用した手法が開発されている.この方法では,屈折率nの半球プリズムの下面に対する臨界角以上の角度θで光を入射させる(図6・40).プリズム下面には,エバネッセント波が発生する.プリズム下面に形成される集光スポットは,プリズムを使用しない場合にくらべて,プリズムの屈折率分だけ小さくなる.これは,油浸対物レンズを用いて光学顕微鏡の分解能を向上させるのと同じ手法である.この手法を油浸レンズに対して,固体浸レンズ(solid immersion)と呼ぶ.

図6・40

固体浸レンズの手法で利用するエバネッセント波は二つの媒質の境界面近傍に局在する波であるので,試料を観察するには,試料とプリズム下面との距離を波長以下に制御する必要がある.また液体にくらべて,固体では屈折率の大きなものを選ぶことができるので,より分解能の向上が期待できる.

固体浸レンズでは,超半球プリズムを利用して,より高分解能を実現する手法も開発されている(図6・41).超半球プリズムを利用した手法では,プリズム表面での屈折を利用することにより,下面に対する光の入射角を大きくし,より高分解能にすることが可能である.超半球プリズムを用いた場合の集光スポットの大きさr0は,

式6・114

で与えられ,屈折率のn2に反比例して,集光スポットが小さくなる.

図6・41

6・5・2 微細構造によるエバネッセント波の発生

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