2・6・1 量子雑音

メーザーでもレーザーでも,増幅器として使うとき,増幅媒質の励起状態からの自然放出は誘導放出によって増幅される信号に対して雑音となる.そこで,上準位の原子数がN2,下準位の原子数がN1の増幅器の実効的帯域幅をΔνe,増幅利得をGとすると,入力等価雑音パワーは,

式2・146

で与えられる19).この式は増幅器が反転分布媒質だけの場合であるが,回路損失などがあるときは,実効的に増加したN1を用いて式(2・146)を適用することができる.

理想的増幅器で反転分布が大きく,利得が高くて,N2>>N1,G>>1ならば,

式2・147

となる.普通の電子回路の増幅器が熱雑音を持つのに対して,これは光の量子性による雑音であるから,量子雑音と呼ばれている.そして,理想的な増幅器でも式(2・147)より小さい入力パワーは検出できないので,これを標準量子限界という.入力をパワーでなく,複素振幅で検出するときには,複素振幅の二つの直交位相成分が不確定性関係にあるが,式(2・147)は二つの位相成分を同等に測定する場合に相当するので,標準と呼ぶのである.もし,一方の位相成分の測定を犠牲にすれば,他方の位相成分は標準量子限界を超えて測定することができる.

増幅器の雑音を表す入力等価雑音温度Tnは,Pnと等しいパワーを放射する黒体の温度で定義されるので,

式2・15i

である.そこで,標準量子限界の式(2・147)に相当する入力等価雑音温度は,

式2・148

となる.標準量子限界の雑音温度は,波長1 cmのマイクロ波では2Kなのでメーザーは低雑音増幅器であるが,波長1 μmでは2×104 Kになるのでレーザー増幅器は低雑音ではない.

2・6・2 レーザー光のスペクトル幅

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