2・2・1 2準位原子とコヒーレント光との相互作用

周波数分布の広いインコヒーレン卜な光に対する誘導放出や吸収を表すには,アインシュタインのB係数が便利であるが,コヒーレントな光の場合には不便であり,また,強い光に対しては使えない.そこで次に,コヒーレントな強い光と相互作用する2準位原子の誘導放出を考える2)3). 実際の原子は,多数のエネルギー準位を持っているが,レーザー媒質ではその中の二つのエネルギー準位だけが共鳴して利用され,非共鳴の準位は不要な吸収や分散を生じている.そこで,共鳴する二つの準位だけを持つ原子を仮定し,それを2準位原子と呼んでいる.

原子の二つの準位の波動関数をψ1(r,t),ψ2(r,t)とし,固有エネルギーをそれぞれW1,W2とすれば,

式2・11

と書ける.初めにいずれかの固有状態にあった原子は,入射光の摂動を受けると,

式2・12

で表されるようになる.a1(t)とa2(t)は,それぞれ状態1と2の確率振動を表す.

この2準位原子に角周波数ωの直線偏光のコヒーレントな光が入射するとき,原子に働く光電界の大きさは,

式2・13

と書ける.電界の方向にz軸をとれば,原子の遷移双極子モーメントのz成分は,

式2・14

または,

式2i

である.ただし,e(<0)は電子の電荷を表す.

そこで,2準位原子と単色直線偏光との相互作用ハミルトニアンは,

式2・15

と表される.この摂動を受けると,原子の波動関数はシュレディンガーの波動方程式

式2・16

に従って変化する.ただし,式2iiは摂動のない原子のハミルトニアンであって,

式2・17

である.そこで,a1(t)とa2(t)の時間的変化は,式(2・15)と式(2・17)を式(2・16)に代入し,

式2・18

になることがわかる.exp[±i(ω+ω0)t]の項は急速に正負に振動する非共鳴項なので,無視することができる.これを回転波近似といい,この近似では,

式2・19

になる.ただし,式(2・15)以外の摂動はないものとする.

原子は初め上の準位にあったとして,t=0でa1=0,a2=1の初期条件のもとで式(2・19)を解くと,

式2・20

となる.ただし,

式2・21

と置いた.

2・2・2 遷移確率

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