多層膜スーパーミラー(multilayer super mirror)とは
直入射では50 nmより短い光の反射事がたいへん小さくなる.大きな反射率を得るためには,軽/重の2種類の金属薄膜(1 nm)を交互に多数蓄積した多層膜が用いられるようになってきた.しかし,この場合,層間隔(周期長)と入射角がブラッグ条件を満たす波長のX線だけしか反射されない.許される波長幅は積層数Nに反比例し,反射帯域幅Δλは通常λの数十分の1となる.この反射帯域幅を広げるため,層間隔を基板から表簡に向かって徐々に変化させながら積層したものが多層膜スーパーミラーである.異なる波長はそれに合った層間隔の部分で反射され,干渉効果を利用しながらも反射波長域が通常の多層膜より1桁以上広い(Δλ/λ/2)ことが「起(スーパー)」たるゆえんである.この方式は,多層構造による吸収の影響の少ない硬X線領域(0.1 nm)で有効となり,広い波長域で高い効率を必要とするX線望遠鏡やX線顕微鏡の分野で注目されている.