真空蒸着(vacuum evaporation)とは

物質を加熱して蒸発させ,その蒸気を冷たい基板上に凝縮させて薄膜を形成する方法の中で,真空中で処理をおこなう方法.蒸着現象そのものは大気中でも観察されるが,実用に耐える薄膜の形成には真空が用いられる.その理由は大きく三つに分けられる.(1)高温になる蒸発源および蒸発物質が大気中の成分と反応して酸化物や窒化物になるのを防ぐ.(2)蒸発分子や原子が蒸発着基板に到着前に,ガス分子と衝突し散乱され被蒸着基板に到達しなかったり,また,科学反応して変質したりするのを防ぐ.(3)被蒸着基板上に蒸発分子や原子が到達し薄膜が成長する間に,ガス分子の取込みや吸着が起こるのを防止する.このほかに蒸発源に電子銃を用いる場合には電子が蒸発分子に到達するためにも,真空であることが必要である.