全光スイッチ(all-optical switch)とは
光で光を直接制御する光スイッチ.光-光スイッチと呼ぶ.現状の光スイッチでは,媒質に電界印加や電流注入などの電気的制御を加え,同媒質に屈折率変化や吸収率変化を誘起し,これにより被制御光の透過率などを変調する.これに対して全光スイッチでは,制御光による光励起で媒質中に透過率や吸収率変化を有機し,被制御光の透過率などを変調する.屈折率変化の場合は,光干渉系と組み合わせることにより光路切換えが可能である.電気的制御に頼らないため,CRリミットに制限されない高速スイッチ実現の可能性がある.光励起による媒質の屈折率変化や吸収率変化は.3次の非線形光学効果の一種である.このような非線形光学効果には,実励起もしくは仮想励起に伴うものがある.半導体などをそのバンドギャップエネルギー以上の光子エネルギーを持つ波長の光で共鳴励起すると,電子-正孔対もしくはプラズマが実励起される.これに伴う上記の非線形光学効果は大きいが,その緩和時間,すなわちキャリヤ寿命はナノ秒程度と遅い.したがって,このような実励起過程を利用する全光スイッチは,大きな非線形性を利用して低エネルギー動作が可能であるが,その動作速度は通常遅い緩和時間によって制限される.これに対して固体中で仮想励起を災現するためには,通常首位相緩和時間がきわめて短いため媒質を非共鳴起する必要がある.このため上記のような光学非線形性の共鳴増強はあまり期待できず,大きな動作エネルギーが要求されるが,仮想励起であるため高速動作が可能である.→カー非線形性