量子輸送(quantum transport)とは
金属や半導体に電流を作用させると電子が電荷を輸送し,電流が誘起される.この場合,電子の運動は量子力学に従うので,この言葉が使用される.誘起された電流と作用している電界の比率が電気伝導率である.物質がパルスな系では,総線形応答理論を適用して電子の速度相関により電気伝導率が理論的に求められる.他方,サブミクロンスケールの電子デバイス(ビリアードなど)では,散乱行列の透過成分を用いてコンダクタンス(電気伝導率を一般化したもの)が求められる.近年,平均自由行程より小さい,いわゆるメゾスコピック系において,量子輸送の磁界依存性や量子カオスの量子輸送への影響の実験研究が盛んになっている.同時に,電気伝導率やコンダクタンスの半古典型論による基礎づけもおこなわれている.