励起子のレーザー発振(lasing of excitons)とは
励起子とは,半導体内に生成された電子と正孔が,クーロン力により自由な相互運動を制限され,互いに引き付け合って,水素原子の電子の束縛状態(1S,S,2Pなど)と同様の束縛状態をバンドギャップ内に作る状態である.水素原子との違いは,(1)電子と正孔の重さの差は電子と原子核ほど大きくない,(2)クーロン力は半導体の誘電率分弱くなる,などがあげられる.励起子の状態密度はバンド端の状態密度にくらべて一般に高いので,励起子を利用することで,半導体レーザーの効率が上がることが期待される.しかし実際には,励起子の束縛エネルギーは,半導体にもよるが20 meV以下であり,室温では励起子は解離する.ただ最近,II-VI族半導体の中で,例外的に束縛エネルギーが60 meVと大きいZnOで,励起子の寄与による室温レーザー発振が,光励起で観測され,励起子の寄与による,レーザー発振の高効率化が期待されはじめた.