レーザーアブレーション(laser ablation)とは

固体材料表面に光子密度(フルエンス)の高いレーザー光を照射すると,材料表面が瞬時的に溶融,蒸発しイオン,原子,ラジカル,分子,クラスタ,固体片などが放出される.この現象を広くレーザーアブレーションという.レーザー照射強度の低い領域ではdesorptionという光化学的機構が支配的な,図体表面からの原子・分子の脱離過程が支配的となるアブレーションの場合は固体表面のエッチングというマクロな現象に関して測定するとレーザーの波長およびパルス幅に依存した明確なレーザー照射フルエンスしきい他が存在するのが特徴である.一般に固体の熱拡散時間よりも十分短い時間内に熱過程および直接励起過程により結合の切断が生じ,運動量あるいは運動エネルギーの伝達によってフラグメン卜の放出が起こる.しかし固体の温度が上昇した結果生じるのか,内部エネルギー緩和過程で生じるのか,あるいは,ほかの要因(たとえば局所的電荷のバランスのズレなど)に支配されるかは,用いるレーザーの波長,強度,パルス幅,繰返し周波数,また材料の光吸収度,熱伝導度,電気伝導度,電子励起解離およびイオン化エネルギー,あるいは単純に金属,有機,セラミックス,複合材料,生体材料などによって巣なる.比較的高圧のガス中では,放出粒子群の前面は雰囲気ガスを圧縮しながら進展し,ブラスト波が生成する.放出粒子は気相中で凝縮して超微粒子やクラスタを形成することもある.水中でのフェライトや生体材料のアブレーションにおいては気泡の役割も大きい.このアブレーション過程は,固体表面の微細加工・改質,超微粒子あるいは過冷却によるクラスタ作製,また飛散してくるフラグメントを体積させることによる金属・半導体・酸化物セラミックスの薄膜作製などに広く応用されている.特に般化物超伝導体などの薄膜形成においては超格子の厚みを制御しながら順次積み上げていく技術が確立されている.=エキシマレーザーアブレーション,レーザーアブレーション整形,パルスレーザー体積法,レーザー脱離