マイクロ電気化学(microelectrochemistry)とは

1~数十μmの大きさの内筒(ディスク)型,あるいは微細加工法により作製したバンド型マイクロ電位を用いる.大きな面積を持つ電極とは異なり,マイクロ電極を利用することによりいくつかの特徴的な電気化学測定をおこなうことができる.たとえば,電極に流れる電流がきわめて小さいため,内部抵抗の高い試料を用いた際のiRドロップを抑えることができる.そのため,低電解質濃度の媒体や非極性媒体中.さらには高分子固体中での電気化学測定が可能である.また,電位の高速掃引をおこなうことができ,電気化学反応の中間体の捕捉や速度論的研究にも適している.隣接する二つのバンド型マイクロ電極(アレイ電極)を用いると酸化(あるいは還元)体を一つの電極で生成させ,他方の電極で還元(酸化)体を捕集する,いわゆる生成-捕集(generation-collection)実験をおこなうことができる.微細加工により作製したアレイ電極では二つの電極間距離を任意に設定することができるため,電極間距離の関数としての酸化体あるいは還元体の捕集効率を通して溶液中の活性砲の反応や拡散過程を直接測定することが可能である.このように,マイクロ電極はユニークな測定をおこなうことが可能であるとともに微量な試料で測定可能であるため,基礎的な研究法としてのみならずセンサや液体クロマトグラフィーの検出器として現在広く用いられるようになっている.