コヒーレント後方散乱(coherent backscattering)とは
レーザー光を一定方向から多重錯乱媒質に照射したときに,照射方向とちょうど逆方向の錯乱光強度にピークが現れる現象.これに類似した現象は以前から,たとえば満月が欠けた月よりも予想外に明るく輝くことなどにより知らされていた.現在,この強調後方散乱現象は,コヒーレント光の干渉効果および光の弱局在の側面から研究されている.2光来干渉によってこの現象を説明する.媒質内の同じ光路を逆方向にたどる光波どうしは遠方場に干渉縞をつくるが,さまざまな光路による干渉縞が方向および周期ともにランダムに重なり合う結果,つねに同位相で重なる逆方向付近のみが明るくなる.これが後方散乱ピークである.このピークは堆積散乱のみならず,多重散乱を起こす粗面からの反射光にも見られる.