キーホールダイナミックス(keyhole dynamics)とは
溶融溶接において溶融池に生じる深い液面の盗みをキーホール(鍵穴)と称する.キーホールの形成によって熱が材料内部に有効に伝達されるため,幅が狭く深い溶込みの溶接が可能になる.大電流密度アーク溶接におけるキーホールの形成は,ローレンツ力によって発生する高速高温のプラズマ気流(数百m/sに達する)の動圧により波面が深く窪む.一方,電子ビーム溶接やレーザー溶接などの高パワー密度ビーム溶接では材料が激しく蒸発するため,その反動力によりきわめて深いキーホールが形成される.赤外レーザーは金属表面でのビーム吸収率がきわめて悪く数%しかないが,いったんキーホールが形成されるとキーホールが一種の擬似黒体となり見掛けのビーム吸収率は85%以上に達する.キーホールダイナミクスとはキーホールの動力学のことをいうが,現象が複雑なため,その詳細はよくわかっていない.