ひずみ量子井戸(strained quantum well)とは

薄い井戸層をバンドギャップの大きな半導体材料ではさみ込む量子井戸構造において,井戸層に圧縮あるいは引張りのひずみを加えた構造.ひずみを加えるために自由な状態で井戸層の格子定数が周りの半導体材料とは多少異なる組成になるように結晶成長する.こうすると井戸層の半導体が周りの半導体の格子定数にむりやり一致させられてひずみが加わった構造となる.ひずみ量子井戸ではひずみの効果で正孔のエネルギーバンドが変わり,状態密度に大きな変化を生じる.引張りひずみを加えると軽い正孔に対応したバンドが最もエネルギーの低い準位となり,またその状態密度が大きくなる.圧縮ひずみを加えると重い正孔に対応したバンドが低エネルギーとなり,その状態密度が小さくなる.近年,半導体レーザーの活性層にひずみ量子井戸を導入して,このようなバンド構造の変化を利用して大幅な特性の改善がおこなわれている.