光CT(optical computed tomography, optical CT)とは

光,特に生体透過性に優れた近赤外領域の光を用いて,生体内情報を横断断層画像として描出しようとする技術.分光学的情報の利用により,組織の血液動態など生理・生化学的情報が連続的に得られることに特徴を有する.一般にCT(computed tomography)といえばX線CTを指す.x線では通常物質による散乱がほとんどなく,物質の原子番号に依存した吸収が散乱に対して桁違いに大きいため吸収のみによるLambert-Beer則(L-B則)が成立し,吸収に関して,いわゆる投影データが得られる.そのため,投影データからむとの吸収係数の分布を計算処理によって再現することができる.しかし,X線CTによって得られる生体情報は主として生体の形態的病変情報である.CTの機能を生体の生理活性情報の取得にまで広げようとすると,可視から近赤外領域の光に対する生体の吸収情報が必要となり,いわゆる光CTの実現がまたれる.ところが,生体は一般に,このような光に対して強度の散乱体であり.X線CTの基礎となっている吸収のみによるL-B則が成立しにくいそのため,光CTをX線CTのアルゴリズムの援用によって実現しようとすれば,生体組織による散乱の影響を取り除〈工夫が必要となってくる.現在,光CTの実現のために主に次の二つのアプローチがなされている.(1)画像の再構成にX線CTのアルゴリズムを利用するために,散乱媒質透過光の中から直線光路近くを伝搬してきた成分のみを抽出する測定法の開発.(2)生体内での多重散乱による複雑な伝搬路の推定を行い,それを考慮した新しいアルゴリズム(光拡散理論に基づいた数多くの逆問題解法)の開発.