非線形光学結晶(nonlinear optical crystal)とは

非線形光学結晶とは,入射光に対して結晶中が非線形的に応答し,かつ複屈折が存在する結晶のことをいう.電子が非線形的に応答するためには,分極の存在が不可欠である.非線形光学結晶では,この分極は相転移によって生じるものと,もともと結晶構造的に分極を生じているものとがある.相転移によって分極を生じる結晶にはLiNbO3,LiTaO3,KTiOPO4,KNbO3などがあり,それぞれ酸素で構成された正八面体の中心に金属が存在する構造をとっている.この金属が正八面体の中心からずれる(相転移する)ことにより,電荷が片寄り分極が生じる.一方,構造的に分極を生じている非線形光学結晶としては,無機材料のポレート系結晶と誘起結晶が存在する.ポレート系結晶とはホウ素と酸素の結合によりさまざまな形の基本構造を持ったものである.その基本構造自体が分極を有している.誘起結晶も同様に基本構造に電子を放出する部分と捕獲する部分とを有するため電荷が片寄り分極を生じる.この分極の度合が大きいと非線形性が大きいということになる.非線形光学結晶を用いて第二高調波発生をおこなう場合,位相整合条件を満たすためには複屈折率の大さきが重要となる.さらに,屈折率分散は吸収端に近づくと急激に大きくなるので,短波長まで位相整合条件を満たすためには,複屈折率が大きく,吸収端が短波長であることが必要となる.また,分極が大きくなると吸収端が長波長となる.よって,第二高調波発生の場合では発生させたい波長によって適当な複屈折率,分極,吸収端の大きさが決まってくる.材料別で見ると,LiNbO3や誘起結晶などは可視光,ポレート系結晶は紫外光の発生に適している.→LB 4 crystal.CLBO結晶,GdYCOB結晶,BBO crystal