波長分散(Wavelength dispersion)とは
光パルスの強度が小さく伝送路の応答を線形とみなせる場合でも,光パルスは伝搬路の波長分散によって変形されていく.伝搬位相kzを,光の角周波数で微分した量は,パルス電界の包絡線の時間軸上の平行移動をもたらし,群遅延時間と呼ばれる.この逆数を伝搬長当りに規格化することで,よく知られた群速度が得られる.群遅延時間をさらに角周波数で微分した量が,2次の分散GDD)である.2次の分散がゼロでないと,光の中心周波数ごとに異なる群遅延時間を受ける結果,光パルスの時間波形が変化する.さらに高次の微分をとって,順次3次,4次の分散が定義される.最も普遍的に見られる波長分散は,屈折率が波長に依存することに起因するものである.近年では,導波路に伴う構造分散,また回折格子やプリズムなどの空間的分散,あるいは多層膜鏡などの多重干渉光学系を利用することで,所望の波長分散が人工的に生成され,それによる波長分散の制御および補償が盛んにおこなわれている.