分割パルス増幅(DPA)とは

分割パルス増幅は、超短パルス用の増幅器で生じる、余分な非線形位相シフトの問題を軽減するために導入された技術。この位相シフトは、利得媒質内に伝搬する、増幅されたパルスの高いピークパワーにより生じ、スペクトルの広帯域化やパルスの歪み、増幅器内の光損傷も引き起こす。

分割パルス増幅(DPA)の原理

分割パルス増幅の基本原理は、増幅の前に複数のパルスに分割し、それぞれを増幅させた後、パルスを再結合するというものである。理論上、このパルス分割は、ビームスプリッタ(例えば、部分的に反射する誘電体ミラー)を使用することによって達成できるが、光路長を高精度で調整しなければならないため再結合が難しい。そのため、分割および再結合のために提案された技術は、かなり早い時期に発明されたものである。直線偏光のパルスを複屈折結晶に入射させて、2つに分離させる。この時、偏光方向を結晶の光学軸に対して、45°回転させて結晶に入射する。結晶長は、分離された2つのパルスが重ならないような長さにする。(数ピコ秒の時間遅延であれば、容易に手頃な長さの結晶を手に入れることができる。)この方法を、結晶を追加して繰り返す。この時、追加の結晶は最初のものよりも長いものを選択する。理想的には、等間隔のパルス列を得るために、それぞれの結晶の長さを各ステップで倍になるように設計する。また、結晶の光学軸の向きも、結晶ごとに45°ずつ変化させる。

DPA-分割パルス増幅器の様子

図1:分割パルス増幅器の光学系。

増幅後の再結合は、ファラデー回転子等でパルス列の偏光を90°回転させた後、同じ結晶群の中を、逆方向にパルス列を伝搬させることで可能となる。他の方法としては、もう一つ結晶セットを用意してもよい。興味深いことは、結晶の長さを波長に一致させる必要無いということである。一致させないことによる影響は、再結合パルスがその後、直線偏光にならないことだけである。実際には、増幅器内のパルスの歪みも、再結合パルスの偏光に影響を与える可能性がある。各結晶で、パルスは2つになるので、5個の結晶があるとすると、25=32個のパルスが生成される。理論上、10個の結晶で210 = 1024のパルスを生成できるが、少なくとも一部の結晶は、とても長くする必要がある。ピコ秒パルスの場合、32個のパルス列でも十分効果はあるが、フェムト秒パルスでは、もっと多くのパルス列が要求される場合がある。

チャープパルス増幅(CPA)との比較

余分な非線形位相シフトの問題を軽減するための他の方法(古くて一般的な方法)に、チャープパルス増幅がある。この方法は、分散でパルスを伸ばし、ピークパワーを抑えて増幅された後、回折格子対などでパルス圧縮するものである。

分割パルス増幅とチャープパルス増幅では、以下の点で異なる。

  • 比較的長い(ピコ秒)パルスに関しては、チャープパルス増幅(CPA)は、非実用的な量の分散を必要とする。この問題は、分割パルス増幅(DPA)には存在しない。
  • 非常に短い(フェムト秒)パルスの場合、DPAでは、最適な材質を使ったとしても、複屈折結晶で生じる色分散を介したパルス広がりの効果が問題となる。(短パルスの場合、より短い結晶を使えるが、この結晶はパルス広がりの効果を十分に補償しない。何故なら、パルス幅の2乗の逆数に対応して、パルスの分散が顕著になるからである。非線形光学効果のほうが、影響が少ない。)
  • DPAのほうが、回折格子対を使用するCPAと比較して、パルスエネルギーの損失がかなり少ない。
  • 分散量の大きい回折格子対を使うCPAではアライメントが難しいが、DPAでは、その問題が存在しない。

結論としては、CPAはパルス幅が1psよりももっと短い場合に適しており、一方、DPAは長いパルスに適していると言える。しかし、実際の使用にあたってどちらの方法をとるかは、他の要素も関わる。一般的に、CPAとDPAを組み合わせることは現実的ではない。何故なら、DPAは干渉の効果を回避するために、複屈折性が大きく、またサイズの長い複屈折性光学素子が必要で、そのため、かなり長いチャープパルスが要求されるためである。直列に接続したマッハツェンダー型のビームスプリッタ/コンバイナのような、十分に大きな時間遅延を生成するための他の方法が必要となる。

参考文献

RP photonics Encyclopedia, “Divided-pulse Amplification”