近年の素粒子物理学は,加速器を用いた素粒子の発見や高精度調測定と,宇宙から飛来する高エネルギーの宇宙線を観測する二つの分野に大きく分かれている.前者の代表として高エネルギー加速器研究機構(つくば市)にあるB-ファクトリ加速器などがあげられ,後者として,岐阜県神岡鉱山地下に設置されているスーパーカミオカのニュートリノ検出器がある.後者は,宇宙線観測による天体物理学の道を拓いた功績により,その開拓者である小柴に2002年のノーベル物理学賞が授与されたことが記憶に新しい.

26・7・1 高エネルギー電子ビームの計測にレーザーが必要とされる背景

加速器を用いた素粒子物理学では,アインシュタインの有名な公式E=mc2,つまりエネルギーと質量が等価であるという基本原理に基づいて,高エネルギーの粒子を衝突させて,その合計のエネルギーに等価な質量の粒子を創出し,その崩壊過程から素粒子の成り立ち,ひいては宇宙の基本構成を検証している.これまで加速器の発展の歴史とともに,エネルギーの低い粒子から高いほうへ順に新しい粒子が発見され,それに伴って素粒子物理学の理解が進んできた.したがって,加速器に要求されるエネルギーはしだいに高いものになっており,最近では,次世代の加速器として電子・陽電子の衝突型リニアコライダー計画が提唱され技術開発がおこなわれているが,その目標エネルギーは,500 GeVという非常に高いものとなっている.また加速器全長も約30 kmという長大なものになるだろうと予想されている.

残念なことに,電子と陽電子の正面衝突の反応確率はエネルギーとともに低くなってしまうため,電子ビームの大きさを1 μm以下に収束させる必要がある.したがって電子ビームのエネルギー密度が非常に高くなり,その断面寸法などはレーザー光による非破壊測定がおこなわれている.ほかの方法たとえば蛍光板などは,電子ビームによる熱的な衝撃に耐えられないため使用できない.

26・7・2 微小な高エネルギー電子ビームの断面寸法測定

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