レーザーとその応用の分野において,光の性質を正しく記述し理解するにはどんな基礎的概念が必要か.これを初めに概観して本章の導入とする.
光は電磁波であるから,まず波動としての基礎が必要であるが,それだけでは十分でない.光には波動性と粒子性がある.波動性は光の古典論によってよく記述できる.粒子性の導出と正しい記述には量子論が必要である.しかし,量子論は古典論を極限として含む一般理論であるから,粒子性のみならず波動性も含むあらゆる性質を記述すべきものである.
量子論で記述された光は,量子状態という新しい自由度をもつことになり,周波数,波数,偏光,強度といったパラメータが同じでも量子状態により様々に性質の異なった光が存在する.代表例として,粒子性を最も適切に表す光子数状態と,古典的波動に対応した量子力学的表現であるコヒーレント状態がある.量子状態の中には古典的対応のない量子論特有の性質を示す非古典的状態というものもある.スクーイズド状態や絡み合い状態などがそうである.量子論で表された光には,どれほど理想的なものであっても不確定性原理により必ずゆらぎがあるというのが重要な特徴である.量子状態の違いがゆらぎの性質の違いとして具体的に現れる場合が少なくない.
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