【波長可変固体レーザーはアレキサンドライトレーザーから始まった】
 波長可変レーザーが色素レーザーから始まったことははじめに指摘しました。しかし液体である色素レーザーは高強度励起のために色素ジェットなどの技術が開発されたとはいえ、本当の高出力レーザー、高ピークパワーレーザーとなるには、扱いが難しく、出力にも限界があります。ルビーレーザーのような固体レーザーの方がはるかに扱いやすく、潜在力が大きいことは明らかです。しかし、有機色素の持つ広帯域な蛍光特性を原子発光の固体レーザーを波長可変にすることはできるでしょうか。大きな矛盾に見えました。
 教えてくれたのは自然でした。ウラル山脈で発見され、ロシア皇帝に献上されたアレキサンドライト結晶はきわめて産出量が少なく、効果で珍しい宝石として世界に知られていました。神様のいたずらと呼ばれ、昼と夜で色が変わる宝石として、希少で珍重された宝石でした。それは太陽光の下とランプの下では、照明光のスペクトルの違いで図のように、青緑の宝石が薄紫の宝石に変わるのでした。まさに不思議な宝石でした。こんな結晶があれば良いな、と想像することはできても、実際に自然界にアレキサンドライト結晶が存在していることを人類が知らなかったら、チタンサファイア結晶の開発はできただろうか、と考えると、アレキサンドライトは貴重な宝石というだけではなく、人類の超短パルス、超高出力レーザーという神様の贈り物が下されたということかも知れません。現実に存在しないものを想像し、発展させることは人間には難しいことなのです。

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