【遷移金属レーザー 遷移金属とは何か?】
Ti:sapphire レーザーに代表される波長可変固体レーザーは遷移金属レーザーと呼ばれます。それでは遷移金属とは何でしょうか。改めて考えてみることにしましょう。
図に示したのは周期律表です。周期律表は両端に典型元素、真ん中に遷移元素と表現されています。典型元素は原子番号が一つ進む毎に性質が変わり、最外殻の価数(電子の数)が変わる元素で、一番左の列が外殻電子が一個のアルカリ金属、次がアルカリ土類金属、右の列が閉殻で構成される希ガス、不活性ガス元素となっています。3 族から 11 族の間のほとんど元素は遷移元素に属します。普通、鉄や銅のような普通の金属が遷移金属だというのはよく知られたことです。
ちょうど先日、トヨタ理化学研究所のフェロー同窓会で面白い話を聞きました。典型元素である Bi や Tl のような元素でも不思議なことがあり、固体物性の謎とされている価数スキップという現象です。取り出した部分の周期律表で赤く塗られている元素の場合、Biの場合は3価と5価、Tl の場合は 1 価と 3 価、Pb では 2 価と4価しか価数が認められておらず、その間の価数はスキップしているだそうです。高温超伝導の研究者はこれを2個の電子がペアーとなって変化するので、超伝導を生み出すクーパーペアーと同様に超伝導の臨界温度を高温化する重要な機構だと考えているのです。これは原子の価数が物理に大きな影響を与えるエピソードとして紹介しました。
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