【Ti3+:sapphire laser の登場:P. Moulton 1986 年】
 一つの材料開発が世界を変える例がある。P. Moulton による Ti:sapphire レーザー結晶は当初、波長可変固体レーザーとして開発されたが、今では超短パルスレーザーとして誰もが認識している。
 ここに示したスライドは Ti:sapphire レーザーの超広帯域バイブロニック遷移を説明するために使っているものです。Ti3+はプラスの電荷を帯びているが、それは Al2O3 結晶格子の中に添加されているので、周囲の結晶格子は全体としてマイナスの電荷をもって電荷中和をしています。つまり結晶格子を形成している原子は Ti3+に対面している方向にわずかに電荷移動して局所的な電気的な中性化をしているはずです。基底状態の Ti3+の 3d 電子は結晶原子の隙間に入り込むようにしていますが、励起されてp軌道に移ると、電子軌道の方向は変化し、結晶電子に正対し、電気的に押し込むようになります。このようにして、電子的な励起で軌道が変化することは、そのまま結晶格子原子を変位させて格子振動を誘起します。すなわち、この場合は、電子励起と振動励起は不可分のものとして強く結合したバイブロニック状態として光と相互作用します。だから Ti:sapphire レーザーは特別に広い吸収・発光スペクトルを持ったバイブロニックレーザーだと説明すると、非常に説得力が生まれます。

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