【Q スイッチパルスの中に Self locking を観測した。】
 一方、異なったモードは異なった周波数を持っているので、全反射ミラーから離れていくにしたがって、位相のずれは拡大し、一定距離離れると、今度は発振モードによる反転分布の解消の影響を受けない。すなわち空間位相が 90 度ずれたところが出てきます。そうすると、発振モードは利得飽和しますので、発振モードが消費しなかった隣接モードの方が利得が高くなり、となりのモードが発振しやすくなり、今度は最初に発振したモードを抑圧するようになるのです。このように、空間的反転分布と縦モードのスペクトルのズレの関係が、複雑なモード干渉を生み出し、ビート信号を作り出します。このような相互干渉、モード競合は一定の利得帯域を持ち、利得帯域内に複数のモードが成立するレーザーにおいてはじめて観測される現象で、線スペクトルしか許容しない理論的なレーザーの中では発生しません。現実の世界はもっと複雑だといえます。
 実際、SA の位置をミラーとルビーの中間に配置した(f)では不平等な利得同士の競合が起り、2 つのパルス列が重なったような波形となりました。SA をルビーロッドの近傍に配置すると、非常にきれいなパルス列が観測されました。これは複数モードの相互干渉が互いに協調し合って、100%変調がかかった状態といえます。ただし、2 モード干渉の制限は変調ではなく、多数のモードが互いを協調し合うように重なった結果、パルス幅は変調幅に比べてうんと狭くなっています。ピークパワーで見ると、単一モード Q スイッチの場合の 2 倍以上 39MW になっています。

無料ユーザー登録

続きを読むにはユーザー登録が必要です。
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
ログインパスワードをメールにてお送りします。 間違ったメールアドレスで登録された場合は、改めてご登録していただくかお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目