【レーザーの共振器理論 Lamb のモード理論の確立】
 1960 年代の初頭、レーザー研究を大きく進歩させた論文は Lamb の光学的メーザーの理論でした。W. Lamb は精密マイクロ波分光によって自由電子と束縛電子のわずかなエネルギー差から生まれる水素原子のラムシフトを発見し、繰り込み理論の契機を与えました。レーザーとの関係をいうなら,後にラムシフトは真空場の揺らぎと軌道上の相互作用から生まれることが分ったので、光学遷移の自然放出過程と通じるものがあります。Lamb はこの業績によって 1955 年にノーベル物理学賞を受賞しているが、同時にマイクロ波分光を通じてメーザーの研究とも深く関係しており、レーザー関係者から深い尊敬を集めていた。その Lamb 先生がレーザーのモード理論を Physical Review に出したのが 1964 年である。合計 22 ページにわたる理論の論文で、非常に精密に光共振器におけるレーザーモードの成立とそれらの安定性について議論している。1960 年代はこの論文はいわばレーザー理論のバイブルのような存在であった。筆者が 4 年生の時、夏休みに日本電気の中央研究所、内田研究室に 2 週間弱、特別研修として研究を手伝ったとき、日本を代表するレーザー研究者、植木、関口さん達が Lamb の共振器理論を大型計算機の数値計算を利用して検証しているのを見て、さすがだ、と感心した覚えがある。それほどみんながバイブル視していた論文であった。

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