【Self-Q-switching】
後にこの現象を Self-Q-swiching だと分かった現象を筆者は 4 年生の卒業研究時代に発見していました。それは Nd3+:POCl3 レーザーのミスアライメント、共振器長、開口径の影響を測定していた卒業研究時(阪大東野田校舎)の計測でした。液体レーザーの場合、ランプ励起による屈折率の歪みが大きいので、軸外しモードしか発振できないようにすると、巨大パルスが発生しました。ただし、それを制御することは困難で、現象は発見したが、論文にはせず、修士論文に記載しました。
その後、ルビーレーザーの Self-Qswitching の論文を発見し、研究室ゼミ(吹田キャンパス移転後)で自身の研究と重ねて発表した。欧米の研究者が人目を引くような表現で、自分たちの研究を売り出すのに対して、当時の日本人研究者は控えめで、再現性のない偶発的な現象に Self-Q-switching などという表現ができなかったということと、当時はまだまだ日本は遅れているという自覚が先頭に出ることを躊躇していた環境があるのでしょう。しかし、それが良いか悪いかは評価の分かれるところです。実際、学生であった筆者にとっては、それで論文が出せなかったからといって、特に後悔はありません。それより新規な現象に出会える能力があるということで大きな自信となった記憶があります。
それはそうと、はじめてレーザー発振可能な Nd:POCl3 液体レーザーの作成に成功したので、基本的なレーザー特性を取ることから始めました。反射率、共振器長などを変化させて、レーザー出力に与える影響を計測します。固体レーザーに比べてフラッシュランプ励起による屈折率変化が大きな液体レーザーでは、共振器の全反射鏡を傾けて、どの程度ミスアライメントがあってもレーザー発振が起こるかということは、とりわけ興味がある計測でした。
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