【薄膜材料の吸収係数の相対比較】
 薄膜状態の吸収係数が直接計測できたことでおもしろいことが見えてきました。右図は 測定結果を横軸にその材料のバンドギャップエネルギー順に並べ、その光音響信号の大きさ、つまり吸収係数を表示したものです。誘電体多層膜では、高屈折率、低屈折率の薄膜を交互に並べた多層膜を形成するので、屈折率差が大きい方がより高反射率膜を形成しやすいことが分かります。横軸は同じく屈折率順に並んでいるようにも見ることができます。このデータでは酸化物でバンドエッジが一番短波長にある SiO2 と Al2O3 がもっとも吸収が少なくて、酸化物はバンドエッジが長波長側の材料は吸収係数が増加し、フッ化物材料はむしろバンドギャップエネルギーの大きな方が吸収が多い結果となっています。酸化物に関しては理屈通りの感じがするのですが、フッ化物に関しては今でも謎が多い。LaF3 が異常に吸収係数が多いのが典型で、当時のフッ化物材料には不純物が多いことや、色中心ができやすいので、難しいと感じます。ただし、光学業界では誘電体というのは酸化物を意味しており、フッ化物を蒸着材料に用いることはなかったのです。むしろ、フッ化物は蒸着装置については汚染物質でした。ですから、偶然ですがフッ化物の吸収係数を測定しようと思ったのは大きな幸運でした。このデータを取ったときは特に意図があって測定したわけではありません。ただバンドギャップとの関係性が出れば良いと思ったのでしょ うが、結果はそのとおりではありませんでした。

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