【短パルス発生の原理的制限要因】
 レーザー発振、増幅に関する原理的制限要素を考えてみる。まず第一にレーザー媒質が短パルスを増幅する能力を持つ必要があります。超短パルスレーザーでは、短パルス限界はフーリエ限界の式 DnDt=0.315 がよく知られていて、レーザー媒質の帯域がなければ、このフーリエ限界を超えて短パルスを発生することができません。実際、このフーリエ限界パルス幅も、矩形パルス(DnDt=0.891)、ガウスパルス(DnDt=0.441)、sech2 パルス(DnDt=0.315)と短パルス化技術が進歩すると共に、短パルス化に必要な条件が究明されて、短パルス化が可能となりました。一方、レーザー光と相互作用しているのは励起原子ですので、この励起原子の光学遷移の時間が原理的な最終限度となりそうですが、この時間は 10-15s より短いとされており、実際、fs(10-15s)パルスが発生できていることからも、それより長い時間では考える必要がなさそうです。(さらにゼプト秒(10-21s)の光・分子相互作用(光電子イオン化の時間が 247zs と計測されるまでになっています。Science,370,339,2020)
 CW レーザー光が変調を受けて短パルス化すると考えると、短パルスの中核周波数の変調成分がなければ、そのようなパルスを発生することはできないはずです。その意味では、短パルス発生技術のスイッチ速度は短パルス成分を生み出すだけの高周波応答可能でなくてはなりません。そのため、短パルス発生技術が回転 Q スイッチ→電気光学効果→可飽和吸収と発展したのは、高速スイッチそのものが、機械技術→電気技術→光学応答利用と発展したので、これは必然だといえるでしょう。

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