【P. Moulton との会話から】
P. Moulton とは筆者が Applied Optics の Topical Editor や OSA の Director at Largeであった 1990 年前後から親しくつきあい、当時は筆者がセラミックレーザーの研究を発表するようになったこともあり、互いが関係する国際会議に招待し合う関係になった。その中で TiS レーザーに対する研究所内の評価が低かったということを聞かされた。現在のTiS レーザーの活躍を見れば信じられないことが研究所では起こっていた。
Moulton が話してくれたところでは、TiSレーザーなど波長可変固体レーザーの研究をしていた 1980 年代前半から半ば、波長可変固体レーザーに対する研究所内評価は低く、結晶の分光学的研究から TiS は波長可変レーザーとして有望だと考え、特許出願しようとしたが、研究所から拒否されたという。誘導放出断面積が小さいので、レーザー発振には必ずレーザー励起、特に YAGレーザーの第 2 高調波励起が必要だったので、必然的に効率は低いのです。その上、TiS の波長可変範囲は近赤外領域(700-900nm 程度)で、可視光領域で広い波長可変性を持つ色素レーザーより優れた特性とはいえないといわれたという。当時は、広帯域固体レーザーが生み出す超短パルス発生能力というものが評価されていなかったことが反映している。
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