【高出力色素レーザーを可能とした色素ジェット】
 筆者の学生時代、1970 年以前は色素レーザーはルビーレーザーなどの可視域固体レーザーパルスで励起されたパルス発振か、Ar レーザー励起で発振していましたが、励起された色素が三重項状態に行ってしまって連続発振できない状態が続いていました。その状態では安定な波長可変レーザーとしてレーザー分光を開拓することには力不足でした。それが、トリトンX などの三重項クエンチャーが開発され、連続発振が可能になりました。当然、高出力 Ar レーザーで色素セルを照射して連続波長可変レーザーが開発されるようになりましたが、その際、問題になったのは、色素セルの焼き付き、劣化です。強力な Ar レーザーを色素セルに集光照射しますが、複雑な色素は広帯域の吸収スペクトルを持っており、蛍光スペクトルと吸収のすそ野が重なってきます。そのため、無駄な吸収を避けるため、なるべく薄い色素セルで実験をしますが、そうなると、セルの窓材の近傍でも非常にレーザー強度が高くなり、色素が析出してガラスに固着する、それが加熱されて、黒化、炭化してレーザー発振を止めてしまうということが頻発しました。

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