【ガラスレーザーを模擬したハイブリッド固体レーザー】
波長が固定された固体レーザーの宿命を何とか改善しようとする努力を筆者自身が行なった例を示しましょう。それほど、この問題は大事だと考えた証拠だから。
同じ Nd を添加しても、結晶によって吸収・発光スペクトルが異なるのは、その Ndイオンが感じている結晶場が異なるからで、Nd:YVO4 は 1.0641μm と 1.0652μm、Nd:SVAP は 1.0641μm と 1.0653μm のレーザー発振波長を持つ。一方、おのおの 808.6nm に1.7nm 幅、809.6nm に 1.6nm 幅の吸収を持つので、両者は中心波長がズレながらその範囲の励起光を波長に依存した割合で分割吸収することになる。まさに結晶場の異なった微小結晶の集合体であるガラスレーザーの実験的シミュレーション実験が可能となった。図に示したのは 2000 年に筆者らが発表したもので、動作温度を調整して励起用半導体レーザーの波長を 807.5nm から 809.6nm まで変化させると、図にあるように 2 つの結晶で分担吸収をして両者は図の右に示したようにおのおのの波長で発振します。まさに異なる結晶のエネルギー準位からの発振ですから、完璧な不均一広がり(inhomogeneous broadening)を示します。ガラスレーザーはこのようなマイクロな結晶が集合したものだということを示しています。
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