【波長可変レーザーの意味 価値観の逆転】
これから議論する波長可変レーザー、中でもTi:sapphire レーザーは超短パルス・超高出力レーザーの中心となっており、もっとの重要なレーザーと認識されている。しかし、レーザーの歴史を見れば、波長可変レーザーは昔からレーザーの中心ではなく、いわば脇役から出発した。その理由はレーザー科学と原子・分子物理学の関係にある。レーザーにおいて、光を出しているのは、原子・分子である。そのため、光学遷移の研究は原子・分子物理学が基本となる。原子そのものの性質を議論するには、孤立原子、すなわち周囲からの擾乱のない状態で議論するべきであるから、気体レーザーが最適なものとなる。当然、気体レーザーが出す光は原子固有の線スペクトルである。固体レーザーでもなるべく気体レーザーと同様に、原子そのものの特性を最大限に発揮できる環境を整えようとして開発されてきた。そのため、レーザーの波長が原子固有のエネルギー状態、固有スペクトルに限定されるのは、いわばレーザーの宿命と受け止められてきた。
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