軟X線多層膜鏡(軟X線ミラー)(multilayer mirrors for soft X-ray)とは
軟X線領域で垂直に近い入射角においても高い反射率が得られる,多層膜構造を持つ反射鏡.一般に波長が30 nmから1 nmの軟X線領肢では物質の反射率が著しく低下し,また光の吸収も大きいためレンズやミラーなどの光学素子ができなかった.軟X線多層膜は重元素からなる物質と軽元素からなる物質を軟X似の波長オーダーの厚みで交互に多数積層して得られる.この薄膜に入射した光線のうち,各層の界面で多重反射した光波が,反射光として互いに強め合うような干渉条件(ブラッグ条件)となる波長および入射角を持つ光に対して高い反射率が得られる.1970年代より人工超格子を作製する成膜技術を用いて開発が進められ,シンクロ卜ロン放射光の利用技術的進歩とともに発展してきた.現在では軟X線を取り扱うための光学素子として軟X線望遠鏡.軟X線顕微鏡,リソグラフィー光学系をはじめとした種々の応用が期待されている.→X線レーザー,EUVリソグラフィー