光学利得(optical gain)とは
レーザー媒質内で反転分布が形成された際に現れる負の吸収光学利得が生成されると,誘導放出が生じ,光の増幅が起こる.光学利得は,レーザー発振特性を決定する重要な物理量である.実験的には,ポンププローブ分光法などを用いて,負の吸収量(光学利得係数)として評価される.現在実用化されている赤色から赤外域に発振波長を有する半導体レーザーでは,光学利得の生成機構は縮退した電子-正孔プラズマによる反転分布により説明されている.これに対して,青色から紫外波長領域に基礎吸収端を有するワイドギャップ半導体では,光学利得の生成機構への励起子の寄与が指摘されている.励起子による光学利得生成は,励起子が有する大きな振動子強度を考慮に入れれば,レーザー発振に対するしきいキャリヤ密度(電流注入密度)の低減化につながるむのと期待されている.