31・3・1 スペックルとその形成
紙,プラスチック,金属などの粗面にレーザー光をあてると,それらからの拡散反射光中やレンズなどで結ばれたその像の中に,図31・27(a)に示すような不規則な粒状模様が明瞭に現れる.個々の斑点をスペックル(speckle),模様をスペックル模様(speckle pattern)と呼んでいる.模様がほとんど白黒の2階調になっているのは,もともとそのコントラストが高いためである.この模様は白い紙にHe-Neレーザーのビームをあて,反射光の中にレンズを外したCCDカメラを置いて撮影したものである.スペックル模様の成因は粗面の各点で散乱された光が,表面粗さによって生ずる不規則な位相関係で干渉しあうことによる.通常の光では,この干渉が起こらないので拡散光の強度分布は一様である.
レーザースペックル模様の著しい特徴として,(1)3次元空間内の至るところでコントラストが高いこと,(2)その大きさは一般に表面粗さによらず光学系で決まること,(3)表面や光源を動かすと模様も動くこと,があげられる.
スペックルはホログラフィーなどレーザー光で作られる画像を乱すノイズとなり,その効果的な抑制がまず求められた.これは基本的には画像の平均化により実現される.しかし上のような性質が明らかになるとともにスペックル模様をレーザー光の高い可干渉性が粗面に印した,細かさを自由に調節できる自然のマークとして利用して,粗面の変位や変形の非接触測定をおこなうことが考えられた.この場合,干渉縞が細かいために基本的に写真記録に頼らざるをえないホログラフィー干渉法では困難な光電記録が容易に導入できた.ただし,その際に必要情報を拙出するために特有の画像処理が必要となる.これに対しても,その後のレーザーや半導体撮像素子,コンビュータの普及とデジタル画像処理技術の長足の進歩によって短時間で定量的な結果が得られるようになり,スペックル法の実用性はますます高まった.
スペックルの性質と応用に関する定量的な解析に関してはすでに多数の文献がある21)~23).ここではスペックルの基本的な性質と変位,変形測定への応用を述べる.
31・3・2 静的な性質
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