光ファイバー中に光パルスが伝搬すると、光波はファイバーの非線形を通して、自己位相変調と相互位相変調による非線形屈折率変化を受ける。この非線形屈折率変化によりパルスに位相変化が生じると、偏光がファイバー伝搬の途中で変化し得る。このような自己誘起された偏光変化の効果は非線形偏波回転(NPR:Nonlinear Polarization Rotation)と呼ばれ、1964年から観測されている[1]。NPRは偏光子を組み合わせることによって、本質的には数fs程度の高速な可飽和吸収体として考えられる。
NPRは強度に依存するため、ファイバーと偏光子全体としての透過率が強度に依存する。この現象はパルスのペデスタルを取り除くパルス圧縮技術に用いられる[2, 3]。NPRを用いたパルス圧縮の原理を図1に示す。
直線偏光の光がファイバー中を通るとき、直交した2つの成分はそれぞれSPMとXPMによる非線形位相シフトを受けながらファイバー中を伝搬する。この直交した2つの成分の位相シフトの差は、光強度に依存するため、強度の高い成分の偏光は低い成分より大きく回転する。偏光制御器( λ/4波長板、λ/2波長板 ) により、光強度の強いパルスの中心部分だけが検光子(PBS、波長板)を通過し、光強度の弱いパルスの裾部分が通過しないように調整することでパルスを圧縮(短パルス化)できる。しかし、NPRで超短パルス光を圧縮する場合は、ファイバー中の分散や、パルスの分裂あるいはラマンソリトンの生成といった問題に注意しなければいけない。
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