艦隊中央部は地獄のようだった。発電設備と動力部を鋼鉄の槍で貫かれた《エスピランサ》艦内の延焼は止めどなく、誘爆がさらにそれに追い打ちをかけていた。もはや制御不能の艦では減圧も隔壁閉鎖もままならず、火災による有毒ガスの発生も食い止めることができない。亀裂が発生した艦内には風が吹き荒れていた。爆発によって高熱を発する破片が要員の顔や肌に貼りつき、またガラス片なども容赦なく突き刺さった。行動不能になった要員は生きながら爆発の炎に焼かれ、女の子のような断末魔の悲鳴が艦内のそこかしこで低くこだましていた。

「総員待避!」

悲痛なまでのオペレーターの声がスピーカーから流れる中、ヒロは防護服をまとって《響XⅢ号システム》の潜水球(バチスフィア)に閉じ込められていた。先の衝撃で内壁に額をぶつけたナナは血を流している。また彼女は感応したっきりで、現実に引き戻すことは困難だった。どんなに肩をゆすっても、ナナはヒロの声にはまったく反応しない。

「ナナ!」

そうこうするうちに、さらに連続的な爆破が起こって、いままでにない衝撃に見舞われる。緊急警報と警戒音とがヒステリーを起こしたかのように鳴り響き、そこへ要員たちの必死の声が飛び交っていく。動力配管や電気配線からは火花と煙が起こり、火災は周囲一帯を黒煙で満たしていく。こうなれば、脱出するしかない。脱出するためにはいったん、『オプト・クリスタル』とナナの感応を強制的に切り離さねばならない。そんなことをして、支障はないのか? 考えるより先に手を動かし、ヒロは潜水球(バチスフィア)内の計器の分解を試みる。

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