《エスピランサ》に収容されたヒロとナナは、格納庫へ向かうリフトに身を預けていた。地下工廠で受けた拷問の痛みに喘ぎながら、ヒロはナナに話しかけた。

「もしこの戦いが終わったらさ……」

「え?」

まるで目隠しするごとく包帯を巻いたナナの痛々しさから目をそらさずに、すっと彼女を見つめてヒロは言った。

「《エスピランサ》は……ナナはどうするの?」

本来、『アポロン』の抑止力、究極の衛星兵器として地球を監視することを期待されていた《エスピランサ》は、乗員たちの独断によって、『かの国』の核攻撃阻止のために迎撃態勢を整えている。日本を守りきったとして、乗員たちには命令違反による懲罰が待っている。

では、ナナと『オプト・クリスタル』、《エスピランサ》は? 反重力レーザー核融合炉という未知のエネルギー源を秘めたる《エスピランサ》。世界最強の軍事兵器を持つヒロたちは、世界最強のテロリストとなりえる。

それこそ『かの国』の核攻撃を阻止することができたら、《エスピランサ》というテロリストに世界中が手をこまねくだろう。

そのとき、ナナは、〝彼女〟はどうするつもりなのだろうか?

「たぶん、わたしは人間ではいられなくなる」

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