(どこまでこいつらはお人好しなのだ?)

戦闘指揮所を後にした加奈は、売国奴(マゴット)を救うことを決断した要員たちの顔を思い浮かべていた。

自分たちだけが生き延びればいいものを……。たしかに核攻撃による演算は、地球の死を意味していた。またナナの進言に従わぬ場合は《エスピランサ》は自動管制モードに移行し、『アポロン』の操艦を拒否するというのも事実だ。

それでも、自分の命を擲ってまで守る価値があるのか? 人類に? 子供たちに?

――日本人は、バカだ。

そんな想いを新たにした加奈は、しかし、彼らから情報を摂取し、『かの国』へ横流しする売国奴(マゴット)たる自分はなんなのかと問うていた。利己的にこの荒廃した世界を生き抜き、自分はなにを手にしたのか? なにを遺したのか?

ただ、生きてきただけだ。

いや、安穏と過ごしてきたわけではない。生き延びるために必死だった。必死さ故、他人を、日本人を出し抜いてきた。死んでいく日本人を不器用でバカなやつらだとあざ笑ってきた。

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