医務室で目を覚ましたナナは、相変わらずの真っ暗闇の視界に絶望した。〝彼女〟と、《エスピランサ》とつながっている間は、目が見えるのに、というすこし寂しいような複雑な心境を漂った。手をまさぐり、どうやら自分は医務室のベッドで寝かされているらしいことをたしかめたナナは、室内に人気を感じて、一転、警戒の色を濃くする。

「誰か、いるの……?」

誰何すると、体をぼくんと反応させ、「えっ!?」と驚いたような声を上げた。聞き覚えのある少年の声だったことで少し安心したナナは、彼が看病に疲れて寝ていたのだな、と気づいた。

「ヒロ……なの?」

「俺のことがわかるのか?」

「あなたが……わたしを連れ戻してくれたんでしょう?」

ヒロはなにも応えなかった。ナナの内なる意識は、〝彼女〟――つまりは幻影――という絶対的な外部性へと引きずり出されつつあった。ヒロは、彼女のエネルギーが衰えていくのに気がつき、ナナが強い外的な力――あるいはむしろ外部性という強い力――に吸収されつつあったのだと理解する。ヒロが介入しなければナナは外部へと消え去り、彼女の身体と生命力は幻霊の世界とその破壊的なエネルギーに飲み込まれてしまっていただろう。

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