対象領域の空気量が増加した場合を考える。例えば、体積がλ3の標準気圧空気の立方体領域には、約300万個の分子が存在する。近接している(≈3nm)散乱体からの2次波の相互位相はランダムとはならず、干渉が重要になる。前方方向では強め合う干渉となるが、それ以外の方向では弱めあう干渉が優勢となる。高密度媒質中では、横方向・後方への散乱光は全く存在しないか、あっても極めて少ない。下記図は、規則正しく格子状に配置された散乱体中を光ビームが伝搬する様子を示す。

Hecht Figure 4.6

図 高稠密媒質による横方向散乱 原子が密に並んだ媒質へ、左から平面波が入射する。
(十分密なために、)任意の原子Aに対して半波長だけ離れた原子Bが存在する。
両原子が放射する2次波は弱め合う干渉をする。ビームに直交する方向では完全に打ち消し合う。

ある分子Aは球面状に光を散乱する。格子間隔はλに比較して十分稠密であるから、同一入射波面上でAから約λ/2だけ離れた分子Bが必ず存在する。A・Bからの横方向散乱波は互いに打ち消し合う。散乱体の稠密さを考慮すると、任意の横方向において、2次波が互いに打ち消し合う分子対が常に存在するであろう。

媒質がさらに高密度・均一・規則的になれば、横方向で弱め合う干渉はより完全となり、前方方向以外の散乱はより少なくなる。
分子一つからの散乱は微弱である。緑の光は大気中を150km通過することで、エネルギーの半分が散乱される。液体の分子濃度は気体の約1000倍である。液体の単位体積当たりの散乱は、気体と比較して5~50倍程度である(1000倍でない)。透明非晶質固体(例えば、ガラスやプラスチック)も横方向に散乱するが、非常に弱い。良質の結晶(例えば、水晶や雲母)では、ほぼ完全な規則的構造のために散乱はさらに弱い。微粒子による散乱を考える。粒子中の分子数が少なく波長より小さい場合、各分子の散乱波は強め合う干渉をするために散乱は強い。粒子寸法が波長に近づくと、弱め合う干渉が生じ始めるため、散乱は消失し始める。散乱の消失は短波長側(青)から始まり、粒子寸法の増大に従って長波長側に移動する。その結果、前方散乱が優勢になる。任意寸法の球形粒子による散乱の理論解析は、1908年にミー(Gustav Mie)によって初めて発表された。ミー散乱は波長にほとんど依存せず、粒子寸法がλを越えるとその依存性はなくなる。レーリー散乱は、ミー散乱における粒子寸法が極限まで小さくなった場合と考えられる。

 

 

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)