nが周波数に依存することの物理的原因を検討する。入射光のエネルギー―周波数といっても同じ―に応じて、誘電体を構成する原子は2種類の応答をする。一つは散乱である。入射光の伝搬方向を変えるのみで、他のいかなる変化もない。他方、入射光エネルギーが原子の励起準位エネルギーと整合していると、吸収が生じて原子は励起準位へ遷移する。高圧気体や固体・液体の場合、光放出の前に他原子との衝突によって原子の励起エネルギーは熱エネルギーになる。以前は、入射光エネルギーが最終的に熱エネルギーになる前述の過程を吸収とよんでいたが、現在、”吸収”は原子に取り込まれえることを示し―その後、熱エネルギーになるか光の再放出につながるかにかかわらず―、より広い意味で使用されている。このため、狭い意味の吸収を示すには散逸的吸収を使うのがより適切である。

共鳴周波数よりも小さな周波数の光が入射すると、非共鳴散乱が発生する。電子雲は原子核の周りで振動を始めるが、原子が励起されることはない。原子は振動電気双極子となり、入射光と同一周波数の光を放射する。入射光のエネルギーと散乱光のエネルギーは等しい―弾性散乱―。

自然放出の寿命は10-8 sec程度であり、再励起し続ければ、単一原子から毎秒108個の光子を放出することができる。共鳴光との相互作用は強く(吸収断面積が大きい)、低圧気体の場合、適当な放射照度(102 W/m2)で飽和が発生し、光放出・再励起を継続できる。

光照射を受けている媒質中の原子は、膨大な数の光子を(弾性散乱または共鳴散乱を介して)全方位にまき散らす光源とみなすことができる。エネルギーの流れに関して、この様子は古典的球面波と同じである。単純化した見方ではあるが、原子を球面波を放射する点光源と見ることはできる。ただし、”外に向かって放射される球面波といったものは存在しない”というアインシュタインの注意をこころに留めることは必要である。

可視光に対して共鳴しない物質に光が照射されたとき、非共鳴散乱のみが発生し、各原子は微弱な球面波光源としてふるまう。入射光周波数が共鳴周波数に近づくにしたがって、光と原子の相互作用が強まり、高密度材料の場合、散逸的吸収によって光エネルギーが失われる。このメカニズムにより、身の回りの物がいろんな色を示している。

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)